進み遅れの調整

※注意!  ここに書いてあることは通常の利用範囲を超えた行為(裏蓋開けたり、機械を調整したりする)ですので、ご自分でやる場合は自己責任でお願いします。
 メーカー保証が効かなくなるでしょうし、最悪の場合は機械を壊してしまう 可能性があります。

<暇つぶしと実用性の追求を兼ねて>

クォーツ式が月差15秒以内というのが普通なのに比べ、機械式は日差-10〜+20 秒、もうちょいアバウトな時計だと-20〜+40秒、さらに携行時はこの値を超えることもある、などとされています。
日常はクォーツ式を使い、ちょっと気が向いた日だけ機械式の時計のゼンマイをくりくり巻いて装用し、その翌日からはまたクォーツ、なんて場合は精度は気に ならないでしょう。
しかし、機械式を常用するとなれば精度が気になってくるのも人情でしょう。
感覚に個人差はあるでしょうけど、一日に一分ずれたら正直使えないなあ、という感じです。

進み遅れの傾向に規則性があるなら、ある程度の調整と使い方の工夫で、時刻合わせを極力せずに使い続けることが可能です。
ただ、私のような素人が調整できるのはあくまで「進み遅れ」の調整(歩度調整)だけであって、厳密には「精度」を調整できるわけではありません。
「高精度の時計」というのは、姿勢、温度、外乱、ゼンマイ残量の影響を受けにくく、一定の速度で時を刻む時計ということであり、最後に進み遅れの調整を経 て、実用性のある工業製品としての時計になるわけです。
車のエンジン(旧車)で例えると、キャブレタと点火時期の調整は自分で出来ても、ピストンやコンロッド、クランクシャフトのバランス取りはできない、とい う感じでしょうか。
(万人向けの例えではないか・・・^^;)

私がよく買う中国製イロモノ時計は、生来の「精度」はそんなに期待できない上に歩度調整が甘いようなので、実用で使うなら最低限の調整は必要でしょう。
高価な時計では怖くても、安価な時計なら自分でやってみる勇気も出ようというものです。
プロは計測器とか使って行うのでしょうけど、素人は有り余る時間という特権を使って、行き当たりばったりでのんびり調整します。

私が行った手順は下記の通りです。

<Step.1 初期調整>

裏蓋を開けるとテンプが動いているのが見えますが、そこの軸から生えている「緩急針」 というのを調整すると進み遅れが調整できます。


棒が2本生えているように見えますが、そのうちの片方が緩急針、もう片方が「ヒゲ持ち」ですので間違えないようにしましょう。よく観察すると、ヒゲ持ちか らは「ヒゲゼンマイ」が伸びています。
緩急針をヒゲ持ち側に間隔をせばめるようにずらすと遅れ傾向になり、反対に間隔を広げると進み傾向になります。
3時間に一度ぐらい進み遅れをチェックし、気の済むまで再調整して追い込んでいきます。
調整は先の細いドライバーとかを使って行うことになりますが、はっきり言って日差数秒単位の追い込みはものすごく微妙な調整が必要となり、最後は運まかせ ですね。
あと手先が狂うと、ヒゲゼンマイを破損して致命傷になりかねないのでご注意を。
ゼンマイ残量や姿勢でも進み遅れが変わりますので、一定の姿勢、一定の巻き上げ量で調整していきましょう。

ま、普通はこれで満足できると思います。

<Step.2 姿勢差と携行時誤差の把握>

だいたい気の済むまで調整したら、さっそく腕にはめて日常使用しましょう。
ただし、時間の進み遅れを計測し、データを集めながらですが。
もはやここまでくると、正確な時計が欲しいという当初の目的を離れ、正確な時計にしていくための過程自体を楽しむということへの変質が始まります。
かっこ うの暇つぶし、現実逃避とも言えましょう。
で、Princeのパワーリザーブ付きの時計で実際に運用した結 果が下記のチャートです。



横軸が経過時間で、一目盛りが1日分です。縦軸は標準時との差で、±10秒の幅があります。
点と点を結んだ線の色にも意味があって、青い線は腕にはめて携行している時、赤い線は12時を下にして静置している時、白い線は文字盤を上にして静置して いる時を示します。
この時計は文字盤を上にすると進み、12時位置を下にすると遅れる傾向があるため、それを利用して寝る前に時計を置く姿勢を選択することによって、長期的 スパンでの「なんちゃって誤差ゼロ」時計として利用できるというわけです。

この時点でどうしても納得がいかない結果になったら、またStep.1からやり直しですね。

<Step.3 さらなる合理的運用を目指して>

Step.2 を実践するためには、どうしても一日に一回は時計の進み遅れを標準時と 比較するという行為が必要になります。
(まあ時報を聞くまでもなく、寝る前に電波時計や基地局携帯の時刻をちらっと見て、時計を置く姿勢を決めるだけですが。)
リューズを回して時間を調整する行為が別の行為に変質しただけとも言え、なんらかの調整をしていることには変わりありません。
前述のチャートを、携行時と静置姿勢別に分けてチャートにしてみましょう。



静置時は、運用開始直後の不安定期?を除けばリニアな経過をたどっています。
くらべて、携行時はガタガタと段差が激しいグラフになっており、やはり外乱によるものなのでしょう。(たとえば、急な出張があったり、旅行に行ったり、と 行動パターンもいろいろありますし)
それでも時間をかけてデータをとっていけば、マクロな傾向としての近似直線を得ることができます。

一ヶ月運用した結果としては、
という数値が得られました。携行時のマクロ的な累積誤差は非常に少ないですね。
まあ、一ヶ月の中にはゼンマイの巻上げが不足した時もあるでしょうし、極端な温度変化や磁力の影響があったり、いろいろなことがあったでしょう。
そうしたもろもろの要素が積み上げられた上での数値ということになります。

これを前提として、この時計の特性でいけば

ルール1:平日は帰宅後に時計を外したら12時下斜めで静置
ルール2:土日はずっと12時下斜めで静置、ただし日曜の夕方からは文字盤上にする

として運用すると、先の累積誤差の±が相殺され、クォーツ並みの「なんちゃって月差±15秒」を達成できるかも?などと考えましたが、まだ実行していませ ん。

個人的には、Step.2での運用で十分ですね。どうせゼンマイ残量はチェックしないといけないので、そのときに標準時もチェックすればいいことですし。

戻る